それから俺はどうしたのか・・・・よく覚えていない。
たぶん、モッサの車が角を曲がって帰っていくのを見届けてから、俺も車を走らせたのだと思う。
疲れはてて部屋に戻ったときには明け方だったから、たぶん、一晩中走り回っていたのだと思う。
途中、少し雨が降った。
それはすぐに上がった。
俺の涙もこの通り雨のように一時的なものだったらいいのに・・・・なんて。
黙々と仕事をこなすワイパーを見ながら、柄にもなくそんなことを思っていた。
雨が止んでも溢れる涙を止められない俺を乗せて、あてもなく車は走った。
「ごめん・・・・」
何度となく口をついて出るのは、そんな謝罪の言葉だった。
駅前に置き去りにしてきてしまった麻紀への謝罪なのか、モッサの気持ちを裏切ってしまったことへの謝罪なのか。
それとも、もしも麻紀の言葉が本当なら“両想い”だったはずの長澤を泣かせてしまったことへの謝罪なのか・・・・。
もうろうとする頭では、どれに向けられた“ごめん”なのか分からなかった。
きっと、全部なのだろうけど。


