けれど───・・。
「なんだよ、あれ・・・・」
その一言を最後に、あとに続く言葉が出てこなくなった。
今見ているものが全てだ、早く現実を受け入れろ。お前は遅かったんだ、何もかも・・・・。
そう思わざるをえない決定打をこれでもかと打ち込まれたんだ。
モッサの車の中。
奴の胸を借りて泣く長澤と、その頭を優しく撫でるモッサ・・・・。
モッサの車がアパートの脇に停まっていて、長澤も一緒なのだというところまでは分かった。
一方通行の狭い道。
その車を見つけた時点で、俺は何本か前の電柱の横でブレーキをかけていた。
したがって、必然的に車の後ろ側から中の様子をうかがう形になってしまっている。
俺の車の音にもライトにも気づかなかったのだろう。
2人はときどき一言二言、言葉を交わしながら、それからしばらく抱きあっていた。
“後悔してからじゃ遅い”───それを俺は、今ほど身に染みて感じたことはない。
本当に何もかもが遅かったんだ。


