夜11時過ぎ───・・。
「話聞いてもらった上におごってもらっちゃって・・・・ごめんね」
待ち合わせ場所だった駅前の噴水広場の前まで送ると、麻紀はそう言って頭を下げた。
「いいよ。ちょっとは元気出たみたいだし、何かあったら遠慮なく電話くれていいから」
「うん、ありがとう」
俺も麻紀も、そうは言ってもこれが最後の再会になるだろうことはなんとなく分かっていた。
だけど、言わずにはいられないのはなぜなのだろう・・・・。
2人の間を哀愁漂う秋の夜風がさーっと吹き抜けていく。
「電車、もうすぐだろ? 悪かったな、こんな遅くまで引き止めてしまって・・・・」
「ううん、私こそ・・・・。電車、もうすぐだ。そろそろ行かなきゃ」
腕時計に目を落とした麻紀は、そう言って駅のほうに顔を向けた。
「じゃあ、もう行くな・・・・」
そう最後の別れを言うと、俺は麻紀とは反対のほうへ足を一歩踏み出した。
今からまた、俺たちはそれぞれの日常に戻っていく。
もう二度と会うことはない・・・・。


