そう言って無理におどけた顔を作ろうとする麻紀は、見ていて心がえぐられるようだった。
「全てはタイミング。誠治を想いきれなかった私と、そんな私の心の隙間に入り込んだ彼と・・・・タイミングが良くなかっただけだよ」
なんと言葉を返そうかと考えあぐねているうちに、麻紀はそう口を動かす。
“全てはタイミング”・・・・その一言が俺に重くのしかかる。
麻紀との別れがあったからこそ、俺は長澤に出会えた。
俺との別れがあったから、麻紀は今、こんなにも苦しんでいる。
出会いと別れのタイミングは自分ではどうにもすることはできないけれど、今の麻紀を思うと“もっと違う形があったら・・・・”と思わずにはいられない。
「じゃあ、麻紀はこれからどうするつもりなんだ?」
麻紀の顔をしっかりと見れないまま、すっかり湯気が立たなくなったコーヒーを見ながら聞く。
「もうこれ以上はつき合えない。自分がどんどんなくなっていく恋は孤独になるだけだもの」
「そうか」
「うん」
こんな答えが返ってくることは想像していた。


