「そうだね」
そう言うと、麻紀は一口水を飲んでからまた話し始めた。
もとの話に戻ると、麻紀の表情はいくぶん険しくなった。
「メールだけだったのが、そのうち電話になって。休みの日にまでかけたりかかってきたり・・・・。彼の携帯が鳴るたびに疑いが深くなっていったの」
「歩美には? 相談したのか?」
「うん。“よっぽど親しい人でも頻繁に電話はしない”って・・・・」
「確かにな。そんなに連絡を取り合うのは恋人くらいなものだ」
「うん・・・・」
麻紀は深いため息をついた。
そのため息からは、麻紀の心理を読み取るのは難しい。
俺は黙って次の言葉を待った。
「でも・・・・“好きだから”って気持ちだけで頑張ったんだ。誠治とのことで悩んでいたとき、気持ちを楽にしてくれたのは紛れもなく彼だったから・・・・」
「そうか」
「だから、歩美とも話して、最初の1回は目をつぶることにした」
「辛いな・・・・」
「言おうかどうかぎりぎりまで悩んだけど、結局はね」
麻紀はまた一口水を飲んだ。


