「・・・・飯、食えるか? 今からじゃファミレスくらいしかまともな食事は摂れないだろうけど、何か食べないと麻紀の体が心配だ」


込み上げる怒りを抑えながら、再び下を向いた麻紀に言う。

自分でも驚くほど普通に話せていることが不思議でたまらない。


“会って話す”と自分から言ったはいいが、実際に顔を見るまでは何をどう話したらいいか分からなかった。

でも、いざ会ってしまうと、昔のなごりなのか何なのか・・・・自然と言葉が出ていた。


「食欲がないの。自分でも何か食べなきゃと思うんだけど、何も欲しくなくて・・・・」


そう言って麻紀は首を振る。


「じゃあ、店に入るだけでもしてみないか? もしかしたら麻紀が食べたいものが見つかるかもしれない」

「そう・・・・かな?」

「あぁ。飲み物だけでもいいし、立ち話もあれだろ?」

「そうだね。じゃあ、そうする。ありがとう、誠治」

「いいよ・・・・」


麻紀に名前を呼んでもらうことはもう2度とないと思っていた。

懐かしさと一緒に、胸が締めつけられる思いがした。