でも、目の前にいるこの人は一体誰なんだろう、どういう関係の人なんだろう。
ただ“好き”なだけで登坂さんのことを何も知らないあたしは、一気に不安が押し寄せてきた。
あたしが前の登坂さんを知らないのは当たり前で、今さらどうにもならないこと。
だけど、いざ彼を知る人とこうして向き合っていると、好奇心よりもやっぱり不安が勝つ。
あたしの知らない登坂さんを知りたい、教えてほしい・・・・そんな気持ちよりも。
「・・・・あ、そんな顔しないでください。私、彼とはただの知り合いで、特別な感情なんてありませんから」
「へ?」
「親友のことで相談があって。きっと彼なら力になってくれる・・・・そう思ったんです。だから、怪しい者じゃないんですよっ」
不安な気持ちが露骨に顔に出ていたのか、はたまた不審がっているように映ったのか。
その人は、慌てた様子で“ただの知り合い”と自分のことを説明してくれた。
「怪しいなんて・・・・。でも、ちょっとびっくりしましたけどね」
「やっぱり。夜道でいきなり声をかけるのは反則ですよね」


