「こんなものしかないけど、まぁ我慢してくれ」
コトッ。
行儀よく正座している長澤の前に麦茶を差し出す。
カランと氷がこすれ合うが鳴り、いかにも涼しげだ。
「いえ。いただきます」
「で、梅村の“よくない噂”って何なんだ?」
俺は正面に座り、さっそく一口飲んだ長澤に聞いた。
「ほら、内容によっては、前のことも兼ねて早めに対処しないとならないだろう? 急かすようで悪いが聞かせてくれ」
これは建て前。
本当は、早く本題に入らないと顔の筋肉が緩んでしまう。
長澤と至近距離で向き合うことなんて今までなかったから、気を抜くとにやける。
できるだけいつもの顔を作って、長澤が話し始めるのを待った。
「はい、今日トイレで偶然聞いてしまったんですけど、綾ちゃんが二股をかけているって・・・・」
「二股!?」
「そうなんです。その・・・・登坂さんとモッサ君と」
「俺と加藤と・・・・か」
「どこから噂が出たのかは分かりませんが、綾ちゃんが聞いたらショックを受けると思って・・・・」


