あたしは、普段見られない驚いた顔の登坂さんに頭を下げた。
心臓は前より増して早鐘を打つ。
「どうしたんだ・・・・?」
登坂さんが聞く。
顔を上げると、心配そうな目をしている登坂さんがいた。
「あの、会社じゃちょっと言えないことがあって・・・・。相談をしに来たんです。その、綾ちゃんのこと・・・・なんですけど」
あたしは、しどろもどろになりながらも訳を説明する。
海でのこともあるから、登坂さんに綾ちゃん話をするのは内心どうかと思った。
でも、登坂さんは人を選ぶような人じゃない・・・・そう思ったから、思いきって相談してみることにしたんだ。
「梅村のこと?」
「はい。よくない噂を聞いてしまって・・・・。なんとか守ってあげたいんですけど・・・・」
あたしの言葉を聞くと、登坂さんは神妙な顔つきになって黙ってしまった。
きっと登坂さんも5月のことを思い出しているんだ、眉間にシワが寄っている。
「とりあえず話を聞かせてくれないか? ・・・・汚い部屋だけど、外で話すよりはましだろ」


