俺はそう口が滑ったことを“しまった”と思った。
案の定、店長は“ただ何だ?”と次の言葉を待っている。
「・・・・いえ。何でもありません」
「?? ・・・・そうか」
「はい。あ、俺、ちょっと一服してきます」
俺は店長の視線を振り切るようにして、苦し紛れに煙草を持って外に出た。
カチッ。
煙草に火をつけ、煙を思いきり肺に入れてゆっくりと吐き出す。
何時間かぶりの煙草は、やっぱりうまい。心が落ち着く。
何口か吸ったところで、従業員専用の出入口の壁にもたれながら、さっき店長に途中まで言いかけた続きを思い起こしてみる。
「ふぅー・・・・」
煙を空に吐きながら考える。
いつそう感じたのかは分からないが、長澤も俺と似たような部分があるんじゃないか・・・・ただ漠然とそう感じた。
こんなことを店長に言ったら笑われるのが目に見えている。
だからさっき、とっさに“しまった”なんて思ったんだ。
・・・・初対面の相手にこんなことを思うなんて、俺はかなり疲れているんだろうか。


