でも、いつもそこで目が覚めてしまうんだ。

あっけなく、夢から現実の世界に引き戻されてしまう。

だから「でも───・・」のあと、登坂さんが何を言ったか、何を言おうとしたか今だに分からない。


「麻紀・・・・さん」


想像は膨らむばかりで、麻紀さんは美人さんのような気がする。

きっと仕草も声もすごくかわいらしくて、すらっとしたモデルさんみたいな人・・・・。

それが、あたしが勝手に作り上げた“麻紀さん”のイメージ。

登坂さんと釣り合う女性は、あたしの中ではそんな人だった。


その夢を見たあとは、決まってあたしの胸はざわつく。

言いようのない不安が襲うんだ。

“麻紀さん”とはどんな人で、どういう関係の人なのか・・・・登坂さんに聞きたい衝動に駆られる。


登坂さんはあのとき、噂話を1つも否定しなかった。

“もう吹っ切れている”

それだけを言っていた。


「やっぱり麻紀さんって、登坂さんの彼女・・・・だった人だよね」


だから、きっとそう。





だけど───・・。