バックヤードを出て、買い物客の間をくぐり抜けながら長澤の姿を探す。
野菜、雑誌、化粧品・・・・。
いないじゃないか。
これなら店長にどこで見たか聞いてから探しに来ればよかった。
そう思ったとき・・・・。
「いた」
お菓子の品出しを1人でしている長澤を見つけた。
「もう定時過ぎてるから早く上がって。あとは交代のバイトにやってもらうから」
「あ、はい・・・・」
後ろから声をかけると、長澤は勢いよく立ち上がった。
だけど、片付ける様子もなければ帰ろうともしない。
お菓子の袋を持って、何か言いたげな目をしてつっ立ったままだ。
「・・・・どうした?」
「あの、さっきパートさんにここを頼まれたんです。だから、途中でやめるより最後までやったほうがいいと思って・・・・」
不思議に思って聞くと、やっぱり店長の言った通りだった。
自分も定時上がりなのだから、断ってさっさと帰ればいいものを。
「でも、もういいから。残業代なんて目に見えてる。帰れるときに帰ったほうがいい」


