◆誠治side.*:・゚
「登坂、長澤さんはどうした? もう帰らせたか?」
黙々とパソコンに向き合っていた俺は、思い出したような店長の言葉で現実に戻った。
腕時計に目をやると、時刻は定時を30分ほど過ぎていた。
「帰ったんじゃないですか? 長澤には“定時になったら上がれ”と指示を出してましたし」
そう返事をすると、店長は首をかしげる。
「いや、定時間際パートさんに何か頼まれていたみたいだったぞ? まだいるんじゃないか?」
「・・・・分かりました。探しに行けばいいんですね?」
「おぉ、頼むよ」
渋々俺が腰を上げると、店長は手をヒラヒラ振りながらコーヒーを飲んだ。
今の店長はどう見ても俺より暇なはず。なのになぜ俺を行かせる?
・・・・あぁ、そうか。俺は今日から長澤の指導係か。忘れていた。
最近の俺は、他人のことにはほとんど関心がない。
店長しかり、パートしかり、新入社員だってその例外ではない。
麻紀との関係が終わってからは、全てがどうでもよくなってしまったんだ。


