もう一度自己紹介をすると、あたしは慌てて頭下げた。
あいさつのときには誰を見る余裕もなかったけど、こうして改めて向き合うと、登坂さんはすごく背が高かった。
清潔な身だしなみに、ぴしっと着こなした紺のスーツ。
学生生活ではまず会うことのない“大人”な人だと感じた。
でも・・・・少しお酒の匂いもした。
そんな登坂さんは、表情一つ変えずに椅子に座りながら言う。
「名前ならさっき聞いた」
“えっ?”と思った。
「そんなことより、バイトではどんな仕事をしていたか早く聞かせてほしいんだけど。指導方針も早く決めないといけないから」
とっさに“すみません”と言おうとしたけど、すぐに登坂さんにそう言われてしまった。
「あ、はい───・・」
あたしは、それからどんな仕事をしていたかを細かく説明した。
でも、頭はパニック寸前。
最初の印象が悪かったんじゃないか、気分を害することを言ったんじゃないか・・・・。
そんなことばかりを考えてしまって、登坂さんの顔すらまともに見れなかった。