「なんだ」
「あ、俺、加藤孝弘です。この間は自己紹介もできなかったんで、また会えて嬉しいです」
「俺は別に嬉しくない」
「あ、はは・・・・そうですか」
天敵に嬉しがられても困る。
できれば会いたくなかったし、会っても話したいとも思わない。
こっちから聞きたいことは山ほどあったが、年下相手に長澤との関係を迫るわけにもいかなかった。
だが、ほぼ初対面同士が2人きりというのはさすがに気まずい。
モッサもどうやらそのようで、苦笑いを浮かべて海を見ている。
「・・・・そうだ、2人を待つ間、一服でもしませんか? 登坂さんもこの前吸ってましたよね?」
気まずい空気を破ったのはモッサのほうからだった。
そう言うと、ポケットから携帯灰皿を取り出して蓋を開ける。
「あぁ、まぁ」
「長澤、煙草がダメだからずっと我慢してて。吸わないに越したこはないけど、どうしても吸いたくなるんですよね」
「まぁな」
俺だったら長澤の前では我慢しなくても吸わないけどな・・・・と思ったが、言わなかった。


