俺のココ、あいてるけど。

 
出だしから最悪だ。

“なんでモッサの車に乗るんだ”

“どうして俺はここなんだ”

そう思いはじめたらきりがなく、イライラばかりが募っていく。


「はぁ・・・・」


長いため息をつくと、俺は狭いシートに深く座り込んだ。

相変わらずの甘い香水のような匂いがつんと鼻をつく。

隣のぬいぐるみも今は邪魔だ。


「じゃあ、出発しまぁす♪」


エンジンをかけた梅村綾が、長澤を乗せたモッサの車に続く。

助手席に座った長澤は、モッサと何やら親しげに話している。


とことんおもしろくない。

モッサの車も隣の長澤も見たくなくて、俺は目をきつく閉じた。





1度だけ長澤を乗せたときのことを思い出して、俺は夜中に芳香剤を買いに走ったんだ。


「窓、開けてもいいですか?」


遠慮がちにそう言われ、そのとき“しまった”と思ったんだ。

車にしみついた煙草の匂い・・・・きっと長澤はダメなんだろう、と。

簡単に取れるものじゃないが、長澤のためにせめて少しでもましにしておきたかった。