「お待たせいたしました」
「わぁ〜、美味しそう♪」
「そうだね!」
そこにウェイターさんが現れて、あたしたちは美味しいイタリアンとワインを心行くまで楽しんだ。
小百合は料理が運ばれてくるたびに目をキラキラさせて、一口ごとに「美味しい!美味しい!」とはしゃいでいた。
そんな小百合を見ていると、あたしもなんだか“落ち込んでなんかいられない”という気分になる。
「ねぇ小百合、このアスパラ、食べないならもらってもいい?」
お皿はほとんど空になっているのに、付け合わせのアスパラだけを残している小百合に冗談半分で聞いてみたあたし。
「ダメ!これは大事に残してあるんだから!未来にはあげない!」
すると、小百合はお皿を隠す真似までしてアスパラを守る。
「食いしん坊だなぁ、小百合」
「未来だって!」
「ぷっ!」
「ぷぷっ・・・・!」
こんな他愛のない会話でディナーはあっという間に過ぎていった。
美味しい料理は沈んだ気持ちまで前向きに変えてくれる魔法みたいだな、って思った。


