そう言って頭を下げた長澤は、小走りに友だちのもとへ向かった。

水着の入った袋を大事そうに胸の前に抱いて・・・・。


それから俺は、服を見たり靴を見たり・・・・そういうしばらく買っていなかったものを買おうといろんな店を回った。

でも、浮かんでくるのは長澤の顔ばかりで、結局何も買わずに終わってしまった。

帰りに寄ったコンビニで夕飯の弁当を買っただけで、新しいものは1つもない。

それでも、その買った弁当を食べながらふと思う。


“今日、長澤に会えてよかった”

“ほんの少しでも一緒の時間を過ごせてよかった”

“彼氏───そう言われて嬉しかった。長澤も俺と同じように思ってくれていたら・・・・”


「海、楽しみだな」


そう、無意識に口から出る。

テレビのニュースで海の話題をしていたから言ったわけじゃない。

本当にそう思ったんだ。


それは、梅村綾に強引に誘われたときとは心境がだいぶ違っているからなのだと思う。

近くプライベートな部分の長澤を見られることが、俺の気持ちを海に向かわせていた。