小百合の言葉はいつも心強い。

辛いときには一緒に泣いてくれたし、本気で叱ってくれたり励ましてもくれた。

いつでもそうして、強く優しくあたしの背中を押してくれる。

小百合が男の子だったらあたしは絶対好きになる、なんて思うくらいで。

・・・・離れるの、寂しいな。


「ごめん。恵介君のこと、思い出しちゃった?」


あたしの正面に座った小百合は、気遣わしげに眉を寄せた。


「ううん、違うの。小百合と離れるのが寂しいなって思って。二股男なんて思い出したくもないよ」


あたしはそう言って笑った。

本当にそう。・・・・寂しいだけ。

恵介はもう昔の人。

その思い出に浸っていられるほど今のあたしは暇じゃないもの。


「そう? ならいいけど・・・・」

「うん。はぁあ〜、小百合と離れちゃうなら、あたしも院に進めばよかった!」

「バカ言わないの。いっつも単位危なかったくせに、その口が何を言う!」

「・・・・やっぱり?」

「当たり前!」


そう言うと、小百合はまた作業に戻っていった。