「───よし、やるか!」
その日、俺は部屋に帰るとビールの空き缶をゴミ袋に突っ込んだ。
片っ端から全部、勢いよく。
“単純な頭してるな”と誰かが笑うかもしれない。
これを仲間に話したら、いい酒のつまみになるかもしれない。
実際、俺だってそう思う。
でも───・・。
「好きなんだから仕方ない」
そう、これだ。
まだ俺にも恋に突っ走れる力が残っていたんだと思うと同時に、やってやろうという気持ちが沸き上がった。
こんな気持ちを味わうのは、いつぶりだろうか・・・・。
少なくとも、麻紀に恋をしたとき以来のように思う。
「あの頃も突っ走ってたな・・・・」
缶ビールの袋を両手に提げて外に出たとき、そう懐かしく思える自分がなんだか誇らしかった。
着々と年月が変わっている。
時代も変わっている。
あれから俺は少しでも成長しただろうか。大人になれただろうか。
「今の俺で勝負しよう」
空き缶を捨てると、心まで軽くなっている自分に気づいた。