「登坂さん、部屋まで直行コースにしますかぁ? それともブラブラコースにしますかぁ?」
意気揚々と運転席に座った梅村綾は、すぐにそう聞いた。
“ブラブラコース”とは、たぶんドライブという意味だろう。
「部屋まで」
ドライブなんて願い下げだと思った俺は、すぐさまあとのコースを却下した。
早く1人になりたい・・・・。
「はぁい♪」
「場所は知ってるだろ?」
「もちろん♪」
「じゃあ、頼む」
「了解!」
そうして短い会話を交わして、相変わらずニコニコ笑う梅村綾は車を発進させた。
何が楽しいんだか。
梅村綾の車の中は、甘い香水のような匂いがしていた。
ぬいぐるみも多く、かわいらしさを目指しているらしかった。
俺の煙草臭い殺風景な車内とは全くの別物で、これが同じ車なのかと思ったくらいだ。
しばしその違いに目を奪われていると、梅村綾が口を開く。
いくぶん、真面目な感じで。
「登坂さん、なんで今日はそんなに辛そうな顔してるんですか?」


