「・・・・麻紀が幸せになれるなら。麻紀自身が幸せになれる道を進めばいい」


俺の最後のプライド。

泣いてすがりたかった。

その場でプロポーズをして、なんとか麻紀の気持ちをつなぎ止めておきたかった。

・・・・でも、できなかった。


俺の“幸せになれる道”を麻紀に押しつけてはいけない。

麻紀は麻紀の“幸せになれる道”が見つかったんだ。

・・・・それでいい。それでいいじゃないか。

何度も何度も、そう自分に言い聞かせた。呆れるくらいに。


「ありがとう、誠治。・・・・今までわがままばかりでごめん。誠治とつき合った5年間、本当に楽しかったよ」


引っ越す先が決まって部屋を出ていくとき、麻紀は出会った頃と同じ笑顔で笑った。

俺が一目で恋に落ちた、あのひまわりのような笑顔で・・・・。










それから間もなく、俺もその部屋を引き払った。

麻紀の言葉じゃないけど、思い出がありすぎるこの部屋では、俺はどうしても暮らせない。

会社が管理するアパートで一人暮らしを始めたんだ。