俺のココ、あいてるけど。

 
そう言って、意味あり気な言葉と視線で俺の心をかき乱す。

もしかして、梅村綾は俺の気持ちに気づいているのか・・・・?

そう“ハッ”とさせる独特の鋭さがあった。


「知るか、そんなこと。自分でどうにかすればいい」


だから俺は、それを悟られないように取り繕う。

何でもない風を装って、きついだろう言葉を選んだ。


「ふぅ〜ん。まぁ、それもそうですよねぇ。登坂さん、大人〜♪」


俺の言葉に納得したのかどうかは分からないが、梅村綾はそれからは何も言わなかった。


「綾、ここで待ってますから♪」


トイレに入る俺の背中にそう声をかけて、壁にもたれかかっただけだった。





中に入ると、俺は気持ち悪さを吐き出しながら考えた。


梅村綾に最初に会ったときから、彼女はどこか掴み所がなかった。

妙に大人びていたり、かと思えば妙に子どもっぽかったり。

でも、こと恋愛に関しては・・・・特に自分も絡んでいる恋愛に関しては、今のように鋭くなる。

それだけ人を見ている、ということなのだろうか。