「疲れてるのに遠回りさせてごめんね。今日は楽しかったよ」
「うん、俺も。また連絡する」
「じゃあね!バイバイ!」
「おぅ!」
夜11時を少し回った頃、また部屋まで送ってくれたモッサ君は、この前と同じように手を振りながら帰っていった。
でもあたしは、今度は車が角を曲がるまで手を振りって見送ることができなかった。
どうしてだろう・・・・。
居酒屋でも、モッサ君の車の中でも、どこか違和感があった。
隣にいてほしい人、一緒に話をしたい人、お酒を飲みたい人、あたしの名前を呼んでほしい人・・・・。
モッサ君じゃなかった。
カン、カン、カン、カン・・・・!
急いで階段を駆け上がる。
「登坂さん・・・・」
あたしの隣は登坂さんの部屋。
無意識に思い浮かべるのは、名前を呼ぶのは登坂さん・・・・。
「今日もお疲れさまでした。また明日、スーパーで」
いつものようにドアの前でそう言うと、あたしは自分の部屋の鍵を開けた。
5月に倒れたあとからそうしているように・・・・。


