「なぁ、麻紀・・・・」
「ん?」
「いや、なんでもない」
・・・・どうしたんだ、俺。
“少し変だ”と最初に思ったからなのか、会話がうまくできない。
ケンカをしているわけでもないのに、俺だけがどこかギクシャクしてしまう。
レモンティーを口に含んでも、いつものように“うまい”とは感じられなかった。
それから何分経ったのか・・・・。
テレビはスポーツ番組から深夜のお笑い番組に変わっていた。
「そうだ、誠治・・・・」
「なに?」
「ちょっと話があるの」
「・・・・話?」
「うん」
“話がある”と切り出されると、どんな人でもドキッとしてしまうんじゃないだろうか。
近い未来に聞く話がいい話でも悪い話でも“話がある”という台詞自体にドキドキと心臓が鳴る。
「あのね───・・」
どうってことのない話だったらいい。例えば、欲しいものがある、とか。
だが、麻紀の表情は曇っている。
不安が俺の胸を支配する。
「私、もう誠治とは暮らせない」