「セーッフ!!」
チャイムが鳴るほんの数分前に慌てて門に滑り込むと、息を調えながら昇降口へと向う。
ふと、聞き慣れた声が耳に飛び込んだ。
「もぉ、やんなるなあ。何で朝っぱらから走らなきゃなんないのお?」
恭介が振り向いた先に居たのは、同じクラスの沙由で、彼女も3人同様走ってきたらしく、息を荒げながら愚痴を零す。
彼女もこちらに気付いたらしく、嬉しそうに3人の側へ駆け寄ってきた。
「ん?恭介、正希、それに梓ちゃぁんっっ!梓ちゃん可愛いね!あれ、今日ニーハイなんだ?いいよねえその太股に食い込む感じとか、あと」
「はいはいストップ。もうわかった。」
恭介は明らかな男女差別に眉を顰めながら、朝からのテンションの高さと話の内容に溜め息をつく。
毎度のことながら、沙由の外見と内面の差には感心する程のものがあるが、今はそれどころではない。
さっき確かに予鈴が鳴っていた。
「やば、鞄置きに行ってる暇すらねえな。急ぐぞ!」
恭介が駆け出すのを合図に、全員走り出す。
廊下は走っちゃ行けません、とかよく言われたなあ等と下らないことを考えながら片隅で体育館まで来ると、もう既に大半の生徒が集まって並んでいた。
四人も自分の所定の位置に座ると、まるでこの四人を待っていたかのようなタイミングで校長が壇上に上がる。
いつもは薄く笑みを浮かべ、どこか楽しそうな校長が、今日は酷く落ち込んでいるようで、深刻な顔をしていた。
少しの沈黙の後、校長がその重い口を開く。
「今日は…皆さんに大切なお知らせがあります。みみさん、お願いします」
校長がそう言うと、テレビや新聞で見たことがあるような中年男性が何人か出てきて、スポットライトをセットしていた。
確か今コンセントを挿しているのは、環境大臣だった気がする。
何が始まるんだ、と体育館がざわめき始めたその時だった。
