「確かに、あれは面白かったね。…あ、そういえば、今日朝礼があるんだって。1本早い電車で行った子がメールで教えてくれて」
梓は思い出した様に言うと、携帯電話を開け、二人に見せる。
そこには確かに、朝礼を行うという旨が書かれていた。
「うわ…マジかよ…」
「だったら、急いだ方がいいんじゃない? また担任に嫌味言われるのも疲れるし。青海って時間厳しいしな」
恭介はがっくりと肩を落とし、正希は黒い通学カバンを持った手を、やれやれ、というように振る。
青海、とは、彼等が通う青海高校のことだ。
青海高校は、一応制服はあるが、行事、特に卒業式などの時のみ、着用が義務付けられている。
他にも、アクセサリーや鞄、雑居や電子機器等の持ち込み、ある程度の髪型や色の自由が認められている。
そんな自由な学校だが、ここの方針らしく、時間にはかなり厳しいのだ。
「そうだな。ちょっと急ぎ足で行くか。梓、ついてこれるか?」
首を傾げながら恭介が梓の方を振り向くと、彼女は、だいじょぶ、と握り拳をつくった。
「私、足速いってよく言われるからっ」
