出会って間もない(一時間未満と推測した)ヤツから。


身勝手に拘束されて、唇まで公衆の面前で奪われたし。



婚約とか言われた挙句、拉致されかけてる理由もね…!




「・・・クスッ」


そんな有奈の表情が滑稽だったのか、一笑したヘンタイ。



「・・・ッ――」


いや、ちがう…、私に対して笑ったんだ。


耳元へ息を吹きかけるようにして、ワザと・・・




「ようやく、ずっと探していた女性が見つかってね?

こうして彼女を、俺の結婚相手に決めたんだ。

・・・な、未月?」


「・・・ッ――」


有奈へ説明をしながら、ワザと耳元で確かめるように囁いて。


その吐息にビクリと肩を揺らす、私の反応を楽しむらしい…。




どうしても悔しい気持ちは、まったく変わらないのに。


まるで麻酔をかけられたように、私の口は動かなくなる。



ムカつくくらい、即効性のある麻酔なのよ・・・