誰かは分かっているけど、抱き上げられている現状なので。


私は逸る気持ちを抑え、遠慮気味に首を回して振り返った。



その大好きな声の主は、もちろん・・・




「ゆ、ゆぅなぁ…」


親友の名を呼べた瞬間、気が緩んだのか涙が出そうだ。



即座に助けて…!と、言葉を続けようとしたのに。


肝心の有奈の視線はというと、私を捉えていない。



それどころか、珍しく彼女の表情は凍りついていた。




「は、英さん・・・」


「あぁ、こんにちは」


まだ私を抱えている、ヘンタイを窺い見ながら・・・




「な、なんで…、未月を?」


声色からして、猫かぶりなヘンタイの挨拶を受けると。


口をパクパクさせつつ、私を指差しながら尋ねた有奈。



いやいや、ちょっと待って…!


ソレこそ、私の方がが聞きたいし!