い、意味が分かんない…――



「な、なんで、こ、婚約…とか…」


さっきから一本ネジでも外れたように、うわ言を呟く庶民の私。




それもこれもヤツが放った、“婚約”のフレーズのせいだ…!




いっそこのまま…、記憶が飛んでしまえば良いのに。


これが夢の中でなら、爆笑モノの素敵な話なのに。



そんなに都合良くないのも、また人生だったりする・・・



記憶喪失はおろか、失神する気配すら一切ナイ。


健康だけが取り柄の私に、か弱さを求める方が夢のまた夢だ。



唯一の自慢だった丈夫さも、今日は返って仇となるとも知れた。




「どうした、未月?」


「・・・・・」


腰をグイッと引き寄せる、この手が。


耳元で囁き続けている、妖しい声が。



私の願いを嘲笑って、露と消していく・・・