あれほど幾ら磨かれて来たのに、結局は石ころのままで。


砂上の楼閣だよ、まさに――




「…失礼します――」


未だに笑い続ける失礼な彼の横を、俯いて通り過ぎていく。



・・・つもりだったのに。



「待てよ――」


その声が降って来た瞬間、大きな手が私の腕をガッシリと捕らえた。



「ちょっ・・・」


振り解こうにも、女の力で太刀打ち出来るハズもなく。



いつしか私を捕らえた、その強引な手は。


素早く腰元に回って、グイッと強く引き寄せられる…――




「ほら…、行くぞ?」


「ッ――!」


不意に耳元で囁かれて、低音ボイスが鼓膜を刺激する。



ソレは脳髄に甘く響く、魔性の声で。


いつしか心臓が、バクバクと鼓動し始めていた…。