その日の帰り道、
私が店の裏からタクシー乗り場に向かおうとすると
一人タクシー乗り場のベンチに座っている人影が見えた。


早く帰りたい気分なのに、2台目のタクシーを待つのかと思ったらなんだか
異様に疲れがドッとでてきたような気がした。

この時間帯は
タクシーはあまり来ないのだ。
いつもはタクシーに乗る人が少ないから直ぐにタクシーに乗れて帰り道が早く感じるのに色々あった今日に限って待たなくてはいけない。

それが嫌で
イキツケの店がまだやっているか店長に電話をしようとした時、
ちょうど着信がなった。

『もしもし…』
秋山さん!

「あっあの…今日はなんかごめんなさい!」咄嗟の電話に慌ててしまい、電話なのに、しっかり頭を下げて謝罪をしてしまった。

『可愛いな』

え?

『頭下げてくれなくていいよ』

え?

なんで私が頭下げてるのがわかるの?


『前 見てみな』

私は顔を上げて
真っ直ぐ前を見ると
ベンチに座った秋山さんが視界に入った。

「あれ?」

『これからどっかいかない?』

「は、はい」
わけもわからず
うなづいていた。

帰ったハズの秋山さんがなんでココにいるの?
ますます、わからない人だと思いつつも
ますます、わかりたいと思った。


そして、私達は
暫く無言のままタクシーで朝まで空いているバーへと向かった。