逢いたい時に貴方はいない

『いいとこだな。』
少し張り詰めた空気を破ってくれたのは秋山さんからだった。
ソファーの一番手前に手慣れたように腰掛ける。

「コーヒーでも飲む?ビールとかのがいい?」

『じゃビールで…』
(あら、珍しい部屋では呑まない人だったのに…)

お酒でも呑まないと話せない話なのかな……?

私の知ってる彼からは、
もう数年が経ってるんだから、変わったんだね、きっと…

『あのさ、啓子の事なんだけど……』

切り出したのは彼からだった。


「あ、うん」

『あいつさ、俺の会社の社長令嬢なんだよね』

え……?

「あ、そ…そうなんだ」

『社長には色々世話になっててさぁー』

少し伸びをしながら彼は話続けた。


彼が自分の話をするのは珍しかった。


付き合っていた時も滅多に話さなかったから…