逢いたい時に貴方はいない

流行りの曲が流れたかと思うと、

ゆきの携帯の着信だった。


「もしもし?……うん、わかったぁ~じゃあそっち行くわぁ」

短い会話が終わると
彼女は 荷物をとり席をたった。

「友達がボーイズにいるっつうから、いってくんね。じゃご馳走様~」

軽く人を押し抜けて
去っていった。


嵐のようだった。


ゆきがいなくなって
空白の席を埋めるように ゆとりを持って座り直した加藤さんは私にこう言った。

「あいつボーイズにハマってるんだよぉ~男好きだよなあ?」

「ぅ…えっ?あぁ」

彼女が立ち去った事に まだ状況が上手く掴めずにいた。


「疲れた」といって
ガサツに席についたかと思うと、

「腹が減った」といって勝手にオーダーして、

「うちの猫が一番」といって愛猫の写メをみせた。


そして、

「友達がいるから」といって、あっという間に帰っていった。


なんだったんだろう…か。