中からは物音1つしない。



奇妙なくらい静か。



ここに人がいるのかと疑ってしまうほどに。



それとも、私の内側で波打つ鼓動が音をかき消してるのだろうか。



もう、何も聞こえない。



ドアにかけた手が密かに震える。



頑張れ。



胸の中で何度も唱え、ゆっくりと扉を開いた。



窓辺にかかる大きな影。



その姿に私は目を見開いた。



どうし……て?



胸がチクリと痛んだ。



そこで私が見つけた人物。



それは赤羽くんではなく、このクラスの一年生でもない、



「あっ。亜姫だ。
久しぶり」



……懐かしい、先輩の姿だった。