「大丈夫ですよ」



柔らかな言葉が風に乗って私の耳に届いた。



「夏弥は気づいてなかっただけで、ずっと前から先輩のこと大好きでしたから」



私は目をぱちくりさせる。



どこからそんな言葉が出てくるんだろう。



出会った時からとかあり得ないでしょ。



そんな呆れ顔の私を見て少年は付け加えるように続けた。



「夏弥は、中3の冬に振られてから春休みまで、魂が抜けたようにいっつもぼんやりしてたんですよ。

それはもう、夏弥じゃないみたいでした。

僕が何をしても全然ダメだったんです」



思い出すように少年は悲しそうな目で遠くを見つめてた。