「ほれ、亜姫もさっさと帰れ。
お前バカなんだから単位とれなくなるぞ」
しっしっ、と手で追い払われる。
な、なにこいつ。
さっきまでのシリアスな空気返せよ。
「私はそんなに成績悪くないから」
「へー。どっちでもいいけど俺らは戻るから。
行くぞ」
赤羽くんが少年に合図を送り階段を登り始める。
少年はちらっと私の方を見てから満面の笑みで
「対策練っときます」
そう言って去って行こうとした。
「まって」
私は少年を呼び止める。
だってまだ。
「名前……教えて」
こんだけ聞いてもらって名前も知らないなんて。
ちょっと遅くなったけどいま聞かなきゃ。
お礼もしたいし。
少年は振り返りながら少し戸惑いながら笑った。
「大空(ソラ)です」