「大地!!」

「?なっ―」


後ろを振り向くといきなり厚い胸板。


「ってぇ〜」

「あ、悪ぃ;;」
何でこんな至近距離でぶつかんだよ;;


「んで何」

「漢字辞書貸してくんね?」

「あーある……気がする」

「なんだそれ(笑)」




この、朝っぱらから体当たりをしてくる馬鹿は篠岡証治。
高校からの仲で、ポジションが同じ投手ってだけ。
なんだけど最近は仲が良いとよく言われる。
ってか篠岡が俺になついた感じ;;




「ほれ」


渡した辞書は、ホコリまみれでガタガタに折れ曲がった無残な姿で登場した。


「…………………悪ぃ、忘れて;;」

「何だよその反応!!」

「さすがに俺でも使いたくない;;」

篠岡は自他問わず楽天家と言われるほどのポジティブ野郎。
そんな野郎に見放されたこの辞書は、一生使い手が見つからないだろう。




「使え」

「無理」