一番を歌い終わると、お客さんの大きな拍手とともに、歓声が聞こえてきた。 「びっくりしたわ。歌、上手なのね?声もきれいだし」 「ありがとうございます」 お礼を言うと、女の人は何かを思いついたかのようにポンッと手をたたいた。 「流依ちゃん、ここでバイトしない?歌ってくれるだけでいいの」 「え…でも…」 困っていると、いきなり誰かに腕をつかまれた。 振り向くと、私よりはるかに背の高い男の人。 髪は黒で、いかにも高そうなスーツを着ていた。