翔馬と原島ミカへの誤解が解けたのはいいけど
翔馬と話したかったけど
翔馬の前には出れなかった。

わたしは、すっかりけがれてしまった。
翔馬にあわす顔がない。

そんなことがあり、翔馬と会うことのないまま
いくつかの日々が過ぎていった。

男子の姿をみると、あのことを思い出しパニックになりそうになる。
そんなわたしを塔子ちゃんはいつも見守っていてフォローしてくれた。
「大丈夫、私がついているからね」塔子ちゃんは優しく声をかけてくれる。
「うん」


教室の休み時間、塔子ちゃんと廊下を歩いている。

「ねえ、池上さん」
目の前に男子が立ちふさいで話しかけてくる。
わたしは、とっさに塔子ちゃんの後ろに隠れる。

塔子ちゃんの背中越しにこっそりと男子を観察する。
どこのクラスの生徒だろう。顔に見覚えがない。
温和そうで、癖のない。
いかにも好青年って感じだ。
翔馬とは正反対のタイプだ。

男子は決心したように口をひらく。
「前からね。言おうと想っていたんだ。
好きです。」

えっ!?

「泉とつきあう前から、池上さんのこといいなって想ってて
あいつと別れたってきいたから、良かったら、オレとつきあってくれませんか?」

わたしは、何も言うことができずに、塔子ちゃんの肩をつかむ手に力が入る。

「返事は後日でもいいかな?この子、突然のことに緊張しているみたいで」

男子は肩を少しおとしたように去っていく。