きっちり6時半まで勉強したお嬢様はお嬢様の普段通りの生活を取り戻そうとしていた。

「大旦那様はまだお目覚めになりませんので先にいただきますか?」

「うーん。待ってた方が良いんだけど、おなかぺこぺこだから…先もらっちゃおうかな?」

「かしこまりました」

頭を一つ下げて下がれば、キッチンで待機していたシェフ達は今まで居なかった鹿野家の人間のタイプに笑いながら朝食を用意してくれた。

「貴都様は朝が遅い方だったけど、奥様の吉乃さんは朝からテンション高い方だったからな」

古くから鹿野家で働く者達の中には奥様を知る者がいた。

お嬢様の調査書類の中にはお母様に当たる項目もあり、やけにリアルな内容だと思ったら、かつてこのお屋敷で働いていたという。

貴都様に見初められ、身分も家も捨ててご結婚に至ったとの情熱な内容に驚いた覚えがあるが…

「吉乃さんが居た時は一番楽しかったなぁ…って吉乃さんじゃなくって、奥様か?」

「奥様って柄じゃないのにね?」

古株のスタッフ達は昔話に花を咲かすが、奥様を知らないメンバーは貴都様が家を捨ててまで追いかけた方と想像がつかない。