才女はただ地を這う

「これが……銃創?」


にわかには信じられない。
この程度の擦り傷なら、転んで膝を擦りむいた時にでも出来る。詩織のは肩だが、それでも少し塀にこすったりすれば……


「つかない、よね」


私は自分に言い聞かせるように言った。そうなのだ、確かにこのくらいの擦り傷は何かの拍子につくことはある。しかし、しかし。
鎖骨を首元から辿っていったその延長線上。ここを擦り付けることにつながる動きは、人間の身体の性質上無い。皆無だ。


「……このこと知ってるのは?」


「浜崎先生には話したよ。でも取り合ってくれなかった。警察には、行く勇気が出ないよ」


詩織は露わになっていた肩の部分の制服を元に戻しながら言う。


「家族には言ってないの?」


「言えないよ」


力無く首を振る詩織。


「心配するから?」


あまり詩織の家族のことは知らないが、彼女が身につけている靴やアクセサリーはかなり高価なものばかりで、わがままな性格も親に甘やかされてきたがためだと私は思っていた。
そんな親が娘の一大事に黙っているはずはない。


「心配……そうだね、必要以上に気を遣っちゃうから」