才女はただ地を這う

「はい、おしることコーンポタージュどっちがいい?」


近くの自販機で買って来た飲み物を差し出す。詩織は何とも言えない表情で私の顔と両手に握られた缶を順番に見回し、ありがと、と小さく呟きながら親指と人差し指でコーンポタージュの缶の縁を摘む。


「落ち着いたらでいいから、ゆっくり話してごらん」


詩織の隣に座り、おしるこの缶をぶんぶん振る。詩織も真似して大袈裟に中の粒を踊らせる。
こういう仕草だけ見ると本当に小学生のようだ。


「……忘れてたの」


後ろを走る軽自動車のエンジン音にかき消されそうな声で呟く詩織。


「あたし、その、ショックなことがあると一時的に忘れちゃって、それで、それで」


「落ち着いて。ゆっくり話して」


また悪い癖を覗かせた詩織を、頭に手を置くことでなだめる。