才女はただ地を這う

「……ねえ」


少女が私を呼び止める声に遠く校庭のホイッスルの音が重なる。


「ごめん、急いでるんだけど」


少しの苛立ちを顔に浮かべながら振り返った私に、人差し指の代わりに黒く焦げたタバコの先端を突き付けながら少女は言う。


「確か……ヤギ、トウカだよね。2組のクラス委員」


「そだけど」


私がクラス委員に就いたのは二週間程前だが、学年集会や全校集会で軽く挨拶程度はしており、見知らぬ相手が自分の名前を知っていたとしても別に不思議ではない。


「いいんちょがこれ見逃していいの?」


そう言うとずいっとタバコを突き出す。


「あー……うーん……注意して欲しかった?」


「あーいや、何つうか、あんた規律とか厳しそうじゃん。怒られんのかと思った」


「そりゃ言おうと思えば頭のてっぺんから爪先までツッコミ入れ放題だけど、迷惑かけない程度ならいいんじゃない?タバコも吸い殻さえ処理してくれれば別に文句言うことも無いよ。そりゃあんたがタバコ一本吸う毎に一年寿命が縮む病気とかなら止めもするけどさ」