才女はただ地を這う

「や」


少女はタバコを持った右手をひらひらさせて、拍子抜けするような調子で挨拶なのか何なのかよく分からない声をあげた。


「あんたもサボり?」


テンプレート通りのセリフを吐き、タバコをけだるそうに咥える。
中空を虚ろな目で見つめながらだらしなく口を開けると、ぷかぁ、と白い煙が天井に広がった。メンソールの刺激が僅かに目と鼻を刺す。


「あ、それとも生理?どぞどぞお構いなく」


下品な冗談は嫌いだ。私がムッとした顔をすると少女は慌てて頭を掻いた。


「ご、ごめん。あんまそういう冗談通じないよね、悪かった悪かった」


……どうやらあまり私とは合わない性格のようだ。用件だけ聞いてさっさと他を探そう。
私は、彼女の制服のリボンが1年生を表す赤色であることを確認してから話しかける。


「さっきここに誰か入って来なかった?」


「さっき?」


「2、3分前。あんたよりちっこくて癖っ毛な子なんだけど」


「あぁ、ああ。入って来たよん。けどあたしがいるの見て逃げてったわ」


あからさまに落胆した私を見て、テンプレヤンキー少女は罰が悪そうに苦笑する。


参ったな。先客がいなけりゃ捕まえられたのに。ここじゃないとすると、入れ違いで校外に出たか――