「う、嘘じゃないもん!絶対嘘じゃない!」


そう言って黒坂詩織は、小型犬が餌をねだるような表情で私の顔を見る。


……正直、もうフォローのしようが無かった。


「詩織、もう謝ろ。証拠が無いと信じようがないよ」


厳しい口調になりそうになるのをこらえ、出来るだけ彼女を刺激しないように言う。



「ーーーっ!なんで?なんで信じてくんないの?」


涙目になりながら恨めしそうに私を睨む詩織。
困った。こういう時、日頃四方八方に厚化粧を塗りたくった美人を振り撒いている私は恰好の標的となる。


「なんでだよ!トンちゃんの馬鹿あ!」


小さな黒雲が小さな雷で私を狙い撃ち、東の空へ消えて行く。大袈裟な音を立てて教室の扉を閉めた詩織が、ばたばたと廊下を走って行く音が聞こえる。



なんで、と言われても。



いきなり『マシンガンを持ったおっさんに追いかけられて、肩を撃たれた』なんて言われて、信じられるわけないじゃん。