『全然っ…そんなっ…』

急に頭を下げられて驚いた。
街行く通行人が、不思議そうな顔で見ていく


『あっ…あのっ!頭をあげてくださいっ。
 私たちは全然迷惑していませんから』


私の言葉に、彼は顔をあげて微笑んだ。


「本当…ですか?」


『はい。むしろ、私にはこの子達が、あなたが来るたび喜んでいるように見えるんです』


私の言葉に嘘は無かった。

本当に、彼が来るたびゲージの中の子犬達は、すごく喜んでいる。
明らかに、他の人への喜び方とは違った。


「そう言ってもらえて、嬉しいです。
 また、来てもいいですか?」

優しい顔で彼は言った。


『ええ、是非また来てください。』


私が言うと、ありがとう。とだけ口にして
私に軽く頭を下げて、帰っていった。