サッと駆け出した美喜さんを追ってあたしも外に出る。



そこはもう凄かった。



海斗は抱き抱えるようにして引き戻している央と、その前に立ちはだかる岩谷さん。



海斗は身体を振って、央を振り切ろうともがいている。



「何…。」



何を…。



美喜さんとあたしは絶句していた。



その間にも目の前では大変なことが繰り広げられている。



「海斗、落ち着け!」


「お前が今暴力を振るったら、余計事態は悪化するぞ!」



岩谷さんの言葉にあたしは小さく声を漏らした。



事態が悪化する?



って、どういうこと?



みんなまだあたし達がいることに気付いていない。



「え…?」



いや、一人だけ気付いてた。



「美喜さん、あれ。」



呆然としていた美喜さんがあたしの指差すほうへ視線を移す。



「え、なんで?」



あたしも訊きたい。



「なんで川端があんなとこに…。」


「わかんない。
さっきからあたしを睨んでる。」



服の裾をギュッと握って、川端さんがこっちを睨んでいた。



「ホント、由宇希を睨んでる。」


「どうして?」



長い前髪の下から目が光っている。



怖い。



美喜さんはあたしを庇うようにあたしの前に立った。



「美喜。」



ハッと声のほうを振り返る。



「岩谷…。
これ、どういうこと?」



あたし達に気付いた海斗と央も動きを止めてこっちに注目した。



さっきまでうるさかった廊下が静まり返る。



「どうしたの?」



美喜さんの問いに、海斗は俯いた。