「そんなことあったの。」
海斗は驚いた声を上げ、椅子ごとこっちに体を回した。
「うん、なんか大変だった。」
あたしは海斗の部屋にきたときにいつも座る、フローリングの床に寝転がった。
「いきなり彩華が大嫌いって。」
「うん。」
慰めモードに入った海斗は机の椅子からおりてあたしの隣に座る。
「宏も凄く怖かった。」
「うん。」
「あたしが原因らしいんだけど、何したか心当たりないんだよね。」
本当にない。
お節介は焼いたけど、あんまり深入りはしてないし。
「あたしが彩華を嘲笑ってた、って言うの。」
「それって?」
「わからない。
別に馬鹿にした態度とってないし。
どっちかっていうと、そういうことするの彩華だし。」
うーん、と海斗が唸った。
「ますます大変になってきたね。
しかも、由宇希まで絡んできた、と。」
「うん。」
もう本当に学校行きたくない。
「頑張って、としか言えないなぁ、俺。」
なんか助けられたらいいのに、と呟く海斗に首を振る。
「いっぱい話聞いてもらった。」
「これからも聞く。」
気のせいか、声が甘い。
なんだか、子どもみたいに甘えたくなった。
無意識に海斗のジャージの裾をいじる。
「何、どうしたの?」
気のせいじゃない。
さっきより甘い声で訊かれた。
「ん。」
言えない。
この話題なのに、ちょっと浮かれてるなんて、あたし…。
おかしいわ、なんか。


