コンコンとドアがノックされた。



反射的に布団にもぐる。



「由宇希?」



紛れもない、海斗の声。



寝たフリをしようとしたけど、勇気を振り絞って返事をした。



「はい。」


「入っていい?」


「ダメ!」



まだパジャマで布団の中だ。



無理に決まっている。



「あたし、まだ布団の中。」


「関係ないよ。」



軽く言った海斗が入ってくる。



ええぇぇっ、普通入る!?



「ちょっと!?」



さすがに声を荒げる。



と、ドアを閉めた海斗がツカツカと近づいてきた。



「ちょっと、はこっちのセリフだよ。」


「え?」


「ずっと逃げて。
俺がどう思ったかわからない?」


逃げたのは悪いと思った。



けど、逃げたくなったあたしの気持ちもわかってよ。



「海斗が冗談みたいなこと言うから。」


「じゃあはっきり言う。」


「いい!」



思わず遮る。



「いい。」



手で耳を塞ぐ。



あたしは心の準備が出来てません。